毎週月曜日はレジェンドレース回顧録!
伝説的なレースを紹介するこのコンテンツ。
【1988年 天皇賞(秋)】を紹介します。
芦毛馬をご存じだろうか。
芦毛馬とは、白い馬体に灰色がかった競走馬のことで、視覚的にも多くのファンを虜にしている馬である。
実は、かつて芦毛の馬は走らないといわれていた時代があったのだ。
ところが、その戯言をレースで払拭した馬がいる。
オグリキャップとタマモクロスだ。
そして、2頭の馬がしのぎを削ったのが88年の天皇賞(秋)である。
白毛の馬体の一騎打ち。
多くのメディアはこの2頭が出走するレースを総評したように、オグリキャップとタマモクロスが上位人気を占めたのだ。
熱気に包まれた東京競馬場――。
レース前から熱い興奮が湧き、ついにゲートが開いた。
オグリキャップは万全のコンディションでこの舞台に挑み、中団当たりの競馬を行う。
そして、タマモクロスはなんと先行した!
タマモクロスは差しや追い込みを得意としたのだが、このレースにおいては2番手の位置で競馬しているのだ。
これは、タマモクロスの陣営がオグリキャップに勝つために仕組んだ策である。
もともと後方馬なので先行は不向きに思えたが、意表をつく先行競馬を仕掛けたのだ!
タマモクロスの不意打ちにスタンドからどよめきが上がる中、最後の直線へ入った。
前目からさらにペースアップするタマモクロス、そして、その後ろから追撃を仕掛けるオグリキャップ!
2頭がしのぎを削る中、先にゴールしたのは―――。
タマモクロスだった。
オグリキャップとタマモクロスの激戦は多くの人の注目を浴び、いまでも多くのファンが名レースと答える。
なぜなら、どちらも叩き上げの馬だからだ。
地方笠松から中央にデビューし、6戦6勝と無敗で天皇賞(秋)に挑んだオグリキャップと、古馬になってから覚醒し、7連勝でこの舞台に挑むタマモクロス。
どちらもクラシックとは無縁だったのだが、1戦1戦結果を残して天皇賞という最高峰レースに出走するまでの過程が、戦後、どん底の底から高度成長期まで自国を育て上げた日本人にとって共鳴するものがあるからだ。
また、当時は知らないといわれた芦毛馬が、ほかの毛色の馬相手に真っ向で勝ち切る姿も日本人好みした。
この2頭はその後も競馬界で活躍し、いわゆる第二次競馬ブームの火付け役となるのである。