毎週月曜日はレジェンドレース回顧録!
伝説的なレースを紹介するこのコンテンツ。
名馬2頭の最終決戦となり、最高峰の戦い【2008年天皇賞】を紹介します。
ウオッカとダイワスカーレットほどファンの心を虜にしたライバル関係は無いだろう。
3歳時にはチューリップ賞、桜花賞、秋華賞で接戦を演じ、互いが戦わないときでも互いの名誉を傷つけないように勝ち進んできた。
切磋琢磨するまるで少年漫画のようなその関係にファンは心を奮わせたが、4歳になるとすれ違いが生まれてくる。
ウオッカは海外遠征も経験し、ヴィクトリアマイル2着、安田記念1着、毎日王冠2着と実績を積み重ね天皇賞へ臨んできた。しかし、4歳以降ウオッカの出走レースには、ダイワスカーレットの名前は無かった。
ダイワスカーレットは4歳初戦の大阪杯を強敵相手に勝利するものの度重なる怪我で以降出走することが叶わなかったのだ。4歳2戦目、七ヶ月ぶりの復帰戦に選んだのが天皇賞だった。
約10ヶ月ぶりのライバル対決。だが、臨戦過程は別物だった。ウオッカにとっては、GⅠを2勝している舞台で狙い通りのローテ。
ダイワスカーレットにとっては、初めての府中、久しぶりの実戦、完調とはいえない状態での戦い
。
ファンは夢のようなライバル対決に恋焦がれながらも、それが終焉を迎えてしまうことを危惧していた。
もしも2頭の間に力の差が生まれていたら……もう、ライバルと呼べる関係でなくなってしまうかもしれない。
それでも、ウオッカ1番人気、ダイワスカーレットが2番人気で悲喜交々のスタートが切られる。
注文どおりダイワスカーレットが逃げると、ウオッカは中団前目でレースを進め淀みの無いラップを刻んでいく。ダイワスカーレットが先頭のまま最後の直線コースに入ると、ウオッカが先行勢を捉え始める。
ダービー馬ディープスカイと併せる形であがってきたウオッカは残り200メートルでダイワスカーレットに並びかけるが、互いに存在を認識したかのように譲らない。
内外離れての追い比べになり、ゴールしてもなお馬体が重なり合ったまま走り続けた。
歴史的な大接戦。ライバル同士の頂上決戦に、ファンの興奮は最高潮に達した。
これが見たかった。ウオッカとダイワスカーレットの戦いが見たかった。
これがライバルだ。
全く同時のゴール。ターフビジョンにゴールの瞬間が映し出される度に歓声が上がるが、誰もどちらが勝ったか分からない。
しかしゴールしてから13分後、電光掲示板にはウオッカ1着、ダイワスカーレット2着と表示された。
だが、ファンの誰もが手に汗握った馬券の存在を忘れ、目の前で起こった歴史的レースの興奮に酔いしれた。僅か2cmという差が、永遠に語りつがれる名レースを生み出した。
結果的にこれが2頭の最終決戦となり、最高峰の戦いとなった。競馬というスポーツの面白さを再認識させてくれる、類稀なるスーパーレースだ。