毎週月曜日はレジェンドレース回顧録!
伝説的なレースを紹介するこのコンテンツ。
15頭中11頭がGⅠ馬という超ハイレベルであった【1986年の凱旋門賞】を紹介します。
世界のホースマンの夢、凱旋門賞。各国から強豪が集い、パリロンシャン競馬場で行われている。近年ではエネイブルやトレヴの活躍が記憶に新しいが、1986年にこのレースを制したダンシングブレーヴの圧巻のパフォーマンスも忘れてはならない。
ダンシングブレーヴといえば、日本ではキングヘイローやテイエムオーシャンの父としてのイメージが強いが、欧州ではその圧倒的な強さと当時世界最高の141ポンドのレートを叩き出したことから「歴代最強」との呼び声が高い馬だ。
ダンシングブレーヴはデビュー4連勝で英2000ギニーを制覇。エプソムダービーこそ2着に敗れたものの、その後はGⅠ2勝を含む3連勝で凱旋門賞へ臨んできた。
当然本命に推されるが、彼には不安点があった。
後方からのレースになりやすい、という弱点。
一気に追い込んで他馬を飲み込み勝利するのが彼の魅力ではあるものの、タフなロンシャン競馬場ではどんなに凄い末脚を持っていても厳しいという指摘も多かった。
事実、初の敗北を喫したエプソムダービーは後方からの追い込みが届かず負けており、この再現になることを危惧された。
そして、1986年の凱旋門賞は15頭中11頭がGⅠ馬という超ハイレベルなレースとなる。その中には、日本から参戦したダービー馬シリウスシンボリの姿もあった。
豪華メンバーに競馬場が湧き上がるなかスタートが切られると、ダンシングブレーヴはあまり行く気を見せず馬群が密集するスローの展開にも関わらず最後方からの競馬となる。道中は前で動きがあってもじっと後方で我慢し、なにも動きを見せない。そのまま淡々と進み、最後方のまま最後の直線を迎えてしまった。
「もう、終わった……」
誰もがそう思い、先頭争いに目を向ける。
中継カメラもダンシングブレーヴは蚊帳の外といったようにトップ集団をズームアップしたが、突然、大外から追い込んでくる馬の姿が飛び込んできた。
ダンシングブレーヴだ。
鞍上のエデリー騎手が大きな右ムチを入れると、別のエンジンが動き出したかのように一瞬にして先頭に踊り出た。勢いはそのまま衰えることなく差を拡げていき、結局2着に1馬身半差つけレコードタイムでゴールを駆け抜けた。
誰もが諦めた位置取りから、誰もが見惚れる末脚を爆発させ劇的な勝利を飾るとんでもないパフォーマンスに欧州の競馬ファンは酔いしれ、永遠にこのレースを語り継いでいくことになる。
最高峰のレースで、最高峰の戦いを見ることが出来る凱旋門賞。毎年ドラマのあるこのレースから、目を離すことなど出来ないだろう。