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他を圧倒し無敗のままスマートファルコンが勝ち切った【2011年帝王賞】を紹介します。
ダートにも、年間無敗の王者がいる。
ダートにも、サイレンススズカと形容される馬がいる。
全盛期のスマートファルコンに勝てる馬が、はたしてどれだけいるだろうか。
スマートファルコンが本当の砂の王者だと誰もが認めたのが、2011年の帝王賞だろう。この時すでに6歳になっていた彼の下積み時代は長く、5歳の秋に転機が訪れるまでは『地方のGⅡ番長』などと揶揄されていた。
その転機とは、武豊騎手との出会い。
武騎手に乗り代わって2戦目となったJBCクラシックで初のGⅠ制覇。そこからはGⅠ2つを含む4連勝で帝王賞の舞台へと乗り込んできた。
その勢いと武騎手の魅せる逃げ戦法から砂のサイレンススズカとも呼ぶファンもいれば、相変わらず地方競馬しか出走しないスマートファルコンの姿を良く思わないファンもいた。
――中央では勝てないから、地方ばかり走っている。
そんな、心無い声もあがっていた彼の前に、不足のない好敵手が現れる。フェブラリーS、JCダートを勝利した中央ダートのエース、エスポワールシチーだ。本来なら地方の雄、フリオーソも参戦予定だったが疲労が抜けず回避したため、ファンはより一層この2強の初対決に胸を躍らせた。
そうして迎えた2011年6月29日、馬連1.4倍という空前絶後のオッズが掲示され、帝王賞はスタートした。
スマートファルコンがいつも通り好スタートを切り、楽な手応えで先頭に出る。外からエスポワールシチーがやってくるが無理には追わない。
今までハイペースで逃げて他馬をふるい落とした馬。JBCで無理に追ったフリオーソは完敗を喫した。同じ轍は踏まない……そんな声が聞こえてくるかのように、エスポワールシチーは3番手で様子を窺う。
道中は目立った動きが無かったが、3コーナーの入り口付近でエスポワールシチーが進出を開始すると他馬の動きが激しくなる。バーディバーディ、マグニフィカが激しく叩き合う中、スマートファルコンとエスポワールシチーは馬なりで直線コースへやってきた。
その差1馬身。
誰もが、マッチレースを想像した。
その差2馬身。3馬身。4馬身。
誰もが、目を疑った。
故障ではない。エスポワールシチーは激しく追っている。競馬を知らない人間がこの光景を見たら、馬へのムチはブレーキの合図だと勘違いしただろう。
激しく追う後続を尻目に、スマートファルコンは余裕の手応えで9馬身突き放してゴールした。
もう、その強さに異議を唱える者はいなかった。彼に勝てる馬がいるのか、というのが議論の火種になった。
結局、GⅠ5勝を含む9連勝まで記録を伸ばし、2011年は無敗。その大偉業に疑問を抱けないくらいのパフォーマンスを魅せた、伝説の帝王賞だった。