毎週月曜日はレジェンドレース回顧録!
伝説的なレースを紹介するこのコンテンツ。
今回はアーモンドアイが史上初の芝GI・8勝目を連覇で達成となった伝説のレース【2020年天皇賞秋】を紹介します。
どんなに強い馬でも、GⅠは7勝しか出来ない。そんな呪縛が、かつて競馬界に存在した。長い競馬の歴史の中で、6頭だけがその高みに辿り着くことができた。引退レースが7勝目となったディープインパクト、ジェンティルドンナ、キタサンブラックを除くと、壁に阻まれたといえるのは3頭。シンボリルドルフ、ウオッカは怪我に泣いた。テイエムオペラオーは新世代の波にのまれた。
アーモンドアイもまた、簡単に勝つことは出来なかった。
GⅠを6勝して香港遠征が決まっていた2019年末、微熱を発症しこれを回避。急遽有馬記念への参戦が決まるも9着惨敗。
2020年に入り、ドバイターフ連覇を狙うが新型コロナの影響でレースは中止。まるで競馬の神様がイタズラをしているかのような不運に襲われた。
それでもヴィクトリアマイルで7勝目の称号を手に入れ意気揚々と安田記念へと向かう。単勝1.3倍のオッズが示すとおり、多くのファンは呪縛のことを忘れ、GⅠ8勝馬の誕生を歓迎するつもりだった。
結果は、グランアレグリアに2馬身離されての2着完敗。
『8勝は出来ないのか』『衰えが来てしまうのか』
普段はデータや理論で競馬を予想するファンですら、こればかりはオカルトじみた声を挙げることしか出来なかった。
しかし2020年11月1日に行われた秋の天皇賞で、扉は開かれる。
宝塚記念を圧勝したクロノジェネシス、春の天皇賞を連覇したフィエールマンなどのメンバーが揃うなかで、ファンはアーモンドアイを単勝1.4倍に支持した。
スタートが切られると、アーモンドアイは先行して4番手につける。外から馬が来ても、直線を迎えても、鞍上の手は動かない。ずっと手綱を持ったままだった。
勝利を放棄したわけではなく、抜群の手応えで先行集団を捉えていたからだ。ルメール騎手が追い出すとあっという間に逃げているダノンプレミアムを抜き去り、後方から追い込んできたクロノジェネシスとフィエールマンを退けた。
まさに王者の競馬。文句のつけようのない勝ち方で、誰もが認めるGⅠ・8勝馬となったと同時に、アーモンドアイは日本競馬界に存在した越えられない高い壁を、越えるべき高い目標へと進化させた。
記録はある限り破ることが出来る。この偉業を伝説とせず、挑戦できる競走馬が何頭も現れるほど、日本競馬界が発展することを願うばかりだ。